復帰できたと思ったのに、試合や練習の最中、相手との接触もない場面で再び怪我をしてしまう。いわゆる「自爆」と呼ばれるような怪我が、同じ場所だけでなく、別の場所でも起こる。そして、それを何度も繰り返してしまう。

ゼロ化整体では、こうした選手に対して、十分に動けない筋肉が残っていないか、その働きを補う部分に負担が集中していないかを確認します。

痛めた場所の状態とともに、そこへ負担がかかるまでの動作や経過を見ていきます。

肉離れのケースで、現場で見てきたこと

これまで対応してきた肉離れとされるケースでも、硬い部分と、柔らかく動ける部分が混在している状態を多く見てきました。

ゼロ化整体では、硬い部分が十分に伸び縮みできないと、動ける部分がその働きを補い、負担が集中する場合があると考えています。二つの図で、この見立てを示します。

① 全体の関係をつかむ図

図 B-5-1ゼロ化整体の見立てを示す模式図動ける部分硬い部分負担の偏り
硬い部分と動ける部分の混在を示す模式図横向きの筋肉内に斜線で示す硬い部分と青緑の動ける部分を交互に配置。実際の分布や負担を測定したものではない。硬い動ける硬い動ける硬い

動ける部分が働きを補い、
負担が集中

試合・練習中の動作で、
さらに負荷がかかる

② 筋肉の中の混在をイメージする図

図 B-5-2|筋肉の中の混在と負担の集中
硬い部分が点在する筋肉の中で、動ける部分に負担が集中するというゼロ化整体の見立て

二つの図は、ゼロ化整体の見立てを示す模式図です。実際の組織内の状態や分布、負担を測定した図ではありません。

試合や練習で走る・踏み込む・切り返すといった場面でも、筋肉全体の硬さだけでなく、硬い部分と動ける部分の混在に着目します。私たちは、こうした負担の偏りを、接触のない場面で再び痛める問題に関わる要因の一つとして捉えています。

負担が集中した先に、何が起こると考えているか

動ける部分に大きな負担がかかったとき、私たちは、組織の損傷につながる場合と、筋肉に急激な硬さや動かしにくさが生じる場合を考えています。以下はゼロ化整体の見立てを示す図です。二つの場合が重なる可能性も含めて扱うもので、症状や触診で損傷を判定する図ではありません。

図 B-5-3
動ける部分に、負担が集中する
組織の損傷につながる場合
急激な硬さ・動かしにくさが生じる場合
「急性ロック」という見立て

ゼロ化整体では、筋肉が収縮しようとしているのに収縮できない状況で、筋肉ロックが生じると考えています。負担が集中した部分に急激な硬さが生じる状態も、この観点から見立てています。

ここでいう「急性ロック」は、ゼロ化整体独自の原因解釈です。肉離れによる組織の損傷と同一視するものではなく、どちらか一方だと症状や触診だけで決めるものでもありません。損傷の有無や程度は医療側の評価として扱い、ゼロ化整体の見立てとは区別します。

画像で明確な損傷が確認されなくても、確認することがある

画像で明確な損傷が確認されなくても、本人には痛みや動きにくさがある場合があります。

筋損傷についてのミュンヘン合意文書でも、画像上で明らかな筋線維の断裂を伴うものとは別に、明らかな断裂を伴わず、痛みや機能の制限が生じる状態が分類されています。ミュンヘン合意文書(2013)

ただし、この分類がゼロ化整体の「筋肉ロック」を実証するものではありません。

私たちは、画像で明確な損傷が確認されないことだけを理由に「急性ロックだ」と判断せず、硬さの質や分布、動作、問題が起きた場面、対応後の変化を照らし合わせます。

分けて扱うこと 内容
医療側での評価 損傷の有無や程度、診断、必要な対応
施術の場で確認すること 筋肉の硬さの質や分布、動かしにくさ、対応前後の変化
ゼロ化整体の見立て 硬さの混在や負担の集中、筋肉ロックが、動作の問題にどう関わっているか

怪我をした場所と、負担を生んでいる問題を確認する

同じ場所を再び痛めた場合と、別の場所を痛めた場合も分けて確認します。

確認する対象 見ていること
怪我をした場所 硬さや、十分に動かせない状態が残っていないか
かばっていた場所 働きを補ってきた筋肉にも、硬さや動きにくさが生じていないか
硬さの分布 硬い部分と動ける部分が、どのように混在しているか
実際の動作 痛めた場面や、本人が難しいと感じる動きで、何が起きているか
負荷をかけた後の状態 練習を進める中で、硬さや動きにくさが戻っていないか

痛みが落ち着いた後も、必要な動きができているか、その動きをほかの場所が無理に補っていないかを確かめます。

現場での経験|繰り返す問題にどう対応してきたか

これまでの選手支援では、怪我をした場所とかばっていた場所を含めて確認し、負担の元になっていると見立てた問題を重視して、対応する場所・方法・順序を組み立ててきました。

確認した筋肉や動作の変化は、怪我の再発率をどれだけ減らせるかという検証とは分けて扱います。

図 B-5-4
【経験に基づく支援の流れ】
問題が起きた動作・経過と、筋肉の状態を確認する
↓
負担が集中する理由を見立て、必要な場所へ対応する
↓
筋肉と動作の変化を確かめる
↓
練習への復帰中と復帰後の確認へつなげる(B-2)

かばっていた場所の確認と優先順位はA-4、硬さが戻る理由の見直しはB-1で詳しく説明します。

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