同じように「硬い」と感じる筋肉でも、触れたときの硬さの質や、対応した後の変化は一様ではありません。

硬さの質には、例えば、乾いた枯れ木のような硬さ、ぶよっとした感触、パンパンに張った状態などがあります。ゼロ化整体では、こうした感触の違いに加え、弾力や硬さの広がり、力を入れる・抜くときの反応を確認します。

一つの特徴だけで判断するのではなく、複数の手掛かりを動作や対応後の変化と照らし合わせ、どこに、何を、どの順序で行うかを組み立てています。

施術中の手元
施術中の手元(参考写真)。個々の硬さの質や、本文中の特定事例を写したものではありません。

硬さの質を、対応を選ぶ手掛かりにする

私たちは、硬さに複数の要因が重なっている可能性を考えています。一つの対応で変わらないときには、方法だけでなく、対象や順序も見直します。

図A-2-1は、しおんが触れて確かめてきた感触の例と、その背景をどう考えているかを整理したものです。筋張った感触や、個々の筋肉を触り分けにくい状態、粒や塊に触れるような感触なども、対応を考える手掛かりにしています。

触れて感じる硬さの質の違い
図A-2-1|しおんが触れて確かめてきた感触の例と、ゼロ化整体の見立て。イラストは感触をイメージするためのもので、実際の組織像ではありません。すべての硬さを二つに分類する図ではなく、対応後の感触の変化も確かめます。

感触と動作を確かめ直し、見立てを更新する

触れた感触から大まかな見立てを立て、対応する場所・方法・順序を選びます。対応後は筋肉と動作の変化を確認し、再び硬さの質を確かめます。図A-2-2のように、この流れを繰り返しながら見立てと対応を更新しています。

硬さを確かめ、反応を見て、対応を変える
図A-2-2|ゼロ化整体で行っている見立てと対応の流れ。感触と原因を一対一で結びつける図ではありません。④で筋肉と動作の変化を確認したら、①へ戻って硬さの質を改めて確かめます。この確認を繰り返し、見立てと対応を更新します。

触診は、見立てのための手掛かりです。感触だけで血流やATP量などを測定・確定しているわけではありません。硬さの原因を整理する枠組みはR-4で説明します。

確認した違いによって、対応はどう変わるのか

以下は、実践で行ってきた判断と対応の例です。感触と原因を一対一で結びつける一覧ではなく、確認したことを対応へどうつなげているかを示しています。

確認していること ゼロ化整体の見立て 対応への反映
硬さの質や張り方、弾力に違いがある 硬くなっている背景や、重なっている要因が異なる可能性を考える 一律に同じ対応をせず、方法や順序を選ぶ
例えば、乾いた枯れ木のような硬さがある 血液の供給に関わる問題が強い可能性を考える その場所に加え、供給に関わると考える上流側も確認する
ロックへの対応をしても、十分に柔らかくならない 柔らかくなることを妨げる、ほかの要因が残っている可能性を考える 同じ場所への対応を続けるだけでなく、別の部位や順序を検討する
怪我をした場所以外の筋肉にも硬さがあり、その筋肉が動作を補っている かばって働いていた筋肉にも負担が残っている可能性を考える 怪我をした場所と関連部位を確認し、動作への影響を見ながら対応する

大切なのは、対応した結果、何がどう変わったかを次の判断に使うことです。

例えば、最初は乾いた枯れ木のように感じていた場所で、供給側の問題を考えて対応した後に、ぶよっとした感触が現れることがあります。その場合、私たちは、最初の感触だけでは捉えにくかった要因が重なっている可能性も考え、次の対応を見直します。

ここで確認しているのは、触れた感触の変化です。観察した変化と、その背景についての見立ては、分けて扱っています。

具体例|その場所が変わりにくいとき、先に別の場所へ対応する

ロックへの対応をしても、対象の筋肉が柔らかくなりにくい場合があります。

硬さの質や反応から供給側の問題が強いと見立てた場合、私たちは、その筋肉への血液供給に関わると考える部位も確認します。脚であれば、鼠径部周辺などへ先に対応することがあります。

図 A-2-3
対象の筋肉が、対応しても変わりにくい
↓
供給に関わると考える上流側を確認する
↓
必要に応じて、上流側へ先に対応する
↓
対象の筋肉に戻り、変化を確かめる
↓
本人が困っていた動作も、もう一度確認する

これまでの実践では、先に別の部位へ対応した後、それまで変わりにくかった筋肉が柔らかくなりやすくなるのを確認してきました。

私たちは、この変化に血液供給の改善が関わると考えています。ただし、確認しているのは筋肉の硬さや動作の変化であり、血流の変化そのものを直接測定したものではありません。

現場での経験|供給側の問題を見立てたとき、マッサージを同時に加えない理由

技術開発の過程では、緩めながらマッサージを組み合わせる方法も試してきました。試す中で、その場では変わっても、翌日や翌々日に硬さが戻るケースを経験しました。

そこで、供給側の問題が関わると見立てた場合には、柔らかくなれない要因へ対応し、マッサージを加えなくても、本人の身体に変化が起こるかを確かめることを重視しています。

これは技術開発中に経験した経過であり、マッサージの併用が硬さの戻りを引き起こしたと比較試験で確定したものではありません。マッサージなどのケアを優先する場合との使い分けはC-2で説明します。

筋肉の変化を、動作の変化まで確かめる

硬さが変わっても、選手が困っていた動作が変わらなければ、残っている課題を見直します。本人の感覚と実際の動きも確かめ、その反応を次の見立てに使います。切り返しで確認した具体例はA-3で紹介します。

補足|既存研究との接点

動物実験などでは、循環の変化に伴う筋肉の硬さの変化や、筋組織の線維化・脂肪形成が検討されています[1、2]。こうした研究は、私たちが現場で見ている変化の背景を考える参考になります。ただし、ここで紹介した感触の分類や、施術による変化を直接実証したものではありません。

  • [1]Kimほか(2023):静脈うっ滞と筋肉の硬さ・電気活動を調べたブタの実験。原著論文
  • [2]Uezumiほか(2011):筋肉の線維化・脂肪形成に関わる前駆細胞を、筋疾患のモデルマウスなどで調べた研究。原著論文の概要

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