怪我をした場所の痛みは落ち着いてきた。それでも、動きが以前と違う。周辺や別の場所に、張りや動かしにくさが残っている。

ゼロ化整体では、怪我をした場所に加え、その周辺で働きを補っていた筋肉や、反対の動きを担う筋肉の状態も確認します。今つらい場所だけを見ても、そこに負担がかかる理由を捉えきれない場合があるからです。

ハムストリングの肉離れ後を例にすると

これまでの施術現場では、肉離れをした場所だけでなく、その周辺のハムストリングにも硬さが残る状態を確認してきました。また、ハムストリング側の硬さとともに、同じ側の腸腰筋など、股関節を曲げる側の筋肉にも硬さが見られることがあります。

私たちは、こうした状態を次の二つの関係から捉えています。

ハムストリングの怪我をした場所の周辺と、同じ側で股関節を曲げる筋肉の関係
図A-4-1|ゼロ化整体の現場経験に基づく見立てを示す模式図(AI生成)。右側は、持ち上げた同じ脚のハムストリングと、股関節を曲げる側の筋肉との関係を示しています。筋肉の形・位置・色は説明用で、実際の損傷範囲や負荷を測定した図ではありません。すべての選手に同じ関係が生じるという意味ではありません。

① 怪我をした場所の周辺が、働きを補う

ゼロ化整体では、怪我をした場所に十分に働けない状態が残ると、周辺の筋肉がその働きを補い、負担が集中する場合があると考えています。ハムストリングの肉離れ後であれば、怪我をした場所の周辺のハムストリングにも硬さや筋肉ロックが残っていないかを確認します。

② 同じ側の拮抗筋にも、負担がかかる

ここでいう拮抗筋とは、ある動きに対して反対の働きをする筋肉のことです。今回の例では、ハムストリングと、腸腰筋など股関節を曲げる側の筋肉との関係を指しています。反対側の脚を指しているわけではありません。

私たちは、ハムストリングが硬く、十分に伸びにくい状態では、脚を前へ動かす際に、同じ側の腸腰筋などがより多くの力を必要とすると考えています。その負担が続くことで、股関節を曲げる側にも硬さが生じる、という見立てです。

①は周辺が働きを補う関係、②は反対の動きを担う筋肉が、ハムストリングの伸びにくさに対してより多くの力を使う関係です。両者を「かばう」の一言でまとめず、何が負担を生んでいるのかを分けて確認します。

今、負担を受けている場所と、負担の元を照らし合わせる

周辺や拮抗筋の硬さに対応しても、元の場所に動きにくさが残れば、再び負担がかかる理由が残ると考えています。そのため、ゼロ化整体では、今つらい場所と、その負担を生んでいる問題の両方を確認します。

確認する対象 確認すること 対応を考える目的
怪我をした場所 硬さや、十分に動かせない状態が残っていないか 周辺や関連する筋肉に負担を生む問題が残っていないかを考える
その周辺の筋肉 硬さの質・広がり、力を入れる・抜くときの反応 働きを補ってきた場所にも対応が必要かを考える
同じ側の拮抗筋 反対の動きを担う筋肉にも、硬さや動かしにくさがないか 元の筋肉の伸びにくさとの関係を考える
本人が困っている動作 脚を前へ動かす、踏み込む、走る・蹴るなどの動作で、どこに難しさがあるか 部位ごとの状態と、実際の動きを照らし合わせる

確認する範囲は、怪我の経過や困っている動作によって変わります。この例をすべての選手に当てはめるのではなく、本人の状態と、対応した後の変化から見立てを確かめます。

負担を生んでいる問題を見て、対応の順序を組み立てる

筋肉の状態と動作を確認する → 負担を生んでいる問題を見立てる → 対応する場所・方法・順序を決める → 筋肉の状態と動作を再確認する

最も硬い場所を順番に緩めるだけでなく、何が動きを妨げ、どこに負担を生んでいるかという関係を重視します。

これは「必ず怪我をした場所から施術する」という意味ではありません。筋肉が柔らかくなれない背景に、ほかの部位の問題が関わっていると見立てた場合は、そちらを先に確認・対応することもあります。

現場での経験|対応後の筋肉と動作まで確認する

これまでの選手支援では、怪我をした場所に加え、周辺や関連する筋肉も確認し、硬さの質と動作の変化を見ながら対応してきました。筋肉の感触が変わったかだけでなく、本人が困っていた動きにも変化があるかを確認します。

動きの難しさが残れば、確認する部位や対応の順序を見直します。その後の練習で硬さや動きにくさが戻る場合には、B-1の観点から理由を見直し、B-2で紹介する継続支援につなげます。

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