復帰すること、望むパフォーマンスを取り戻すこと、継続してプレーできること。その間にある課題を、現場とともに考える。

怪我からの復帰を支える現場では、出場機会や競技レベルを取り戻すこと、復帰後の怪我に対応すること、負荷を上げる判断と情報共有など、複数の課題があります。

ここでは、ドイツを含むサッカーの研究で報告されたことを整理し、その課題に対して、ゼロ化整体がどのような支援を提案できるかを示します。

1.ドイツの調査で報告されていること

復帰後の出場状況や競技レベルには、課題が残る

ドイツの男子サッカーを対象とするACL(前十字靱帯)損傷登録研究では、プロ・セミプロ・アマチュアを含む607件の損傷(うちプロ120件)について、受傷前シーズン、受傷シーズン、その後3シーズンの出場試合数・出場時間・競技レベルを比較しています。

プロ選手群では、受傷したシーズンの2シーズン後に、受傷前との出場時間・試合数の統計的な有意差は認められませんでした。一方、プロ・セミプロ・アマチュアの各群で、競技レベルの低下も報告されています。

ただし、有意差が認められないことは、全員が完全に回復したことや、受傷前と同等であることの証明ではありません。また、この研究では、選手の動作能力や筋肉の状態を直接検査していません。

この結果から私たちは、試合への復帰と、その後の競技活動の回復を分けて確認する必要があると考えています。Szymskiら:ドイツのACL損傷後の競技復帰調査(2023年掲載・2022年オンライン公開)

復帰後にも、接触によらない怪我が起きている

ドイツ・ブンデスリーガ1部・2部の2022–23〜2024–25シーズンを対象とした研究では、下肢の筋損傷から復帰した後の、非接触性の後続傷害を調べています。

急性ハムストリング損傷からの復帰では、次の結果が報告されました。

確認する点 研究で報告された内容
対象 急性ハムストリング損傷からの復帰154件
後続傷害が観察された件数 43件/154件=27.9%
数えている怪我 接触によらず、練習・試合からの離脱を伴う傷害
観察期間 復帰と同じシーズン中
同じ場所の再受傷だけか 同じ場所の再受傷以外も含む

これは、全選手を一律の期間追跡した「再受傷率」ではありません。

また、復帰後のリスク推移には、筋群や急性・使いすぎによる傷害の区分によって異なる傾向が記述されています。ただし、リスク曲線の形の違いが統計的に確定されたわけではありません。Zhangら:筋損傷からの復帰後の後続傷害リスク(2026)

私たちはこの結果を、復帰時の確認に加え、その後の練習・試合への反応を継続して追うことの重要性につながる情報として捉えています。

2.選手を支える現場では、何が難しいのか

現場では、すでに段階的な復帰評価や、複数の関係者による判断が行われています。その中でも、判断基準や情報共有に課題が報告されています。

調査の対象 報告されたこと
世界のトップリーグ所属131チームによる、ハムストリング損傷後の復帰支援についての回答調査 124チーム(約95%)が段階的な復帰の枠組みを、105チーム(約80%)が共同意思決定を報告。一方、経営陣などからの圧力やスタッフ間の合意形成、試合や選手に関する事情が判断上の課題として挙げられた
男子プロサッカーの実務者81人への回答調査 リハビリ終了の定義や、その後の期間の扱いにばらつきがあった。フィールドでのリハビリを進める客観的基準について、合意や妥当性確認の不足が示され、情報共有も改善点として挙げられた

出典:Dunlopら:ハムストリング損傷後の復帰支援調査(2020)、Dixonら:傷害記録・フィールドでのリハビリ・復帰基準の調査(2026)

いずれも、回答者による報告に基づく調査です。ドイツだけの実態を示すものではなく、Dixonらについては公開抄録の範囲で確認しており、対象国の内訳などの詳細は未確認です。

ドイツのVBGも、復帰を経過日数だけで判断せず、個人ごとの機能・パフォーマンス評価を用いることを勧めています。これは現場を支える推奨資料であり、全クラブの実施状況を示す調査ではありません。VBG:Return-to-Competition

3.その課題に対して、私たちは何を加えられるか

ここからは、研究で報告された課題と、私たちが選手支援の現場で接してきた困りごとを結びつけた、ゼロ化整体からの提案です。

筋肉の硬さや筋肉ロックへの対応は、上記の研究で効果が検証された介入ではありません。私たちの経験と見立てに基づき、選手・スタッフと変化を確認しながら取り組んできた内容です。

表の困りごとも、研究参加者の発言を直接引用したものではなく、支援の場面が伝わる言葉に整理しています。

選手・現場の困りごと 私たちが確認・対応する部分 詳しい説明
復帰したのに、以前のように走る・踏み込む・切り返すことができない 動きに関わる筋肉の硬さを確認。筋肉ロックを含む見立てに沿って対応し、実際の動きがどう変わるかを選手・スタッフと確かめる A-1・A-2・A-3
試合や練習中、接触がないのに、同じ場所や別の場所をまた痛めてしまう 怪我をした場所に加え、かばっていた場所の硬さや動きも確認。動ける部分への負担の偏りという見立てから、対応する場所・順序を考える A-4・B-5
負荷を上げた後、その負荷に対応できているか、判断材料がほしい 練習に復帰していく中で、硬さや動きにくさが戻っていないかを繰り返し確認。本人の感覚や現場の測定・評価と合わせて情報を共有する B-2・C-1
施術での変化が、その後の練習や試合につながっているか確認したい 施術前後の変化と、その後の状態をつなげて確認。セルフ整体や次回の見直しも含め、継続して支える B-2・B-4
ケア側が見ていることを、指導やトレーニングに生かしたい どの動きに困り、何を確認し、何に対応して、どう変わったかを共有。必要に応じて、ケアを担う人への技術指導につなげる D-1・D-3・D-4

私たちは、触診で得た観察を、その現場で用いている機能テストや負荷データ、選手本人の感覚と合わせて共有する形を提案します。触診だけで負荷への耐性や再受傷の可能性を判断するものではなく、医療・指導スタッフと選手本人による評価・判断につなげます。

4.私たちが提案する、現場との確認・協働の流れ

以下は、私たちの経験に基づく現場との支援案です。研究で検証された介入手順を示す図ではありません。

図 R-3-1
選手が困っている動き・場面を共有する
↓
既存の評価・負荷データ・本人の感覚
+
筋肉の硬さの質と、実際の動きの確認
↓
筋肉への対応/トレーニング/他のケアを組み合わせる
↓
施術後の動きと、練習・試合での反応を確認する
↓
・硬さや動きにくさが戻っていないか
・その段階の負荷に対応できているか
・別の場所に負担が偏っていないか
↓
選手・指導スタッフ・ケアを担う人で情報を共有
↓
次の対応や負荷を見直し、再び確認する
↺

その場の変化と、その後の経過をつなげて確認する。変化が不十分な場合や、硬さが戻る場合には、見立てと対応を組み立て直す。

この積み重ねを通して、動き・瞬発力・持久力を含むパフォーマンス全体を、現場とともに支えることを目指しています。

5.研究と現場経験を、どう位置づけるか

情報の種類 この資料で伝えていること
研究で報告されたこと ACL損傷後の出場状況・競技レベルの変化、下肢の筋損傷から復帰した後の非接触性傷害、復帰判断の基準や情報共有の課題
私たちの現場経験 選手の筋肉と動きを繰り返し確認し、施術やセルフ整体、スタッフとの連携を通じて対応を見直してきたこと
ゼロ化整体の見立て 残っている筋肉ロックや硬さが動きを妨げ、ほかの部分への負担につながる場合があるという捉え方
今後、現場と確認していくこと 個々の選手にどのような変化が得られ、その変化が練習・試合の中でどう続くか

これまでに培ってきた確認と対応を現地のスタッフと共有し、選手にとっての変化を一緒に確かめながら、支援を組み立てていきたいと考えています。

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